Vol.015 広域スキャナを用いた、バクテリア観察及びリゾチームによる溶菌過程の動画観察

出典:Hiroki Watanabe, Takayuki Uchihashi, Toshihide Kobashi, Mikihiro Shibata, Jun Nishiyama, Ryohei Yasuda and Toshio Ando
Wide-area scanner for high-speed atomic force microscopy
REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS 84, 053702 (2013)

背景

高速スキャナでは速い走査速度で動画を観察することができるが、走査範囲が狭いため、バクテリアや真核細胞などの大きなサンプルの観察ができなかった。

広域を測定できるスキャナを開発することで、バクテリアやヒト培養細胞の表面を動画で観察することが可能となった。また、これまで可視化できなかったリゾチームによるバクテリア表面の形状変化について、開発されたスキャナによりバクテリアが溶菌する様子を動画で観察することができた。

Keyword: 超広域スキャナ

弊社高速AFMでは、サンプルサイズに合わせて3種類のスキャナから1種類のスキャナを選択する。

高速スキャナは最大20 fpsの動画観察ができるが、走査範囲が 700 x 700nm のため、バクテリアや培養細胞のような大きな
サイズのサンプルは観察できなかった。今回開発された超広域スキャナを用いることで、30 x 30µm の走査範囲まで観察する
ことが可能となる。

観察結果

開発された超広域スキャナを用いて、バクテリアや培養細胞などの大きいサンプルを動画で観察することができるようになった。

マイカにPoly-L-Lysineコートを施し、枯草菌をマイカ基板にソフトランディングさせ観察したところ、長さ1~数µm、直径約730 nmの桿状の枯草菌が多数観察された。

次に、枯草菌を観察しながら、観察溶液中にリゾチームを添加した(最終濃度 80 µM)。リゾチームはバクテリアの細胞壁のペプチドグリカンを分解する酵素で、卵白、鼻汁、涙、母乳などに含まれる。枯草菌などのグラム陽性菌に作用させると、表面のペプチドグリカンが分解され溶菌が引き起こされる。リゾチーム添加後、220~1340秒にわたって、枯草菌表面に短軸方向に水平に「シワ」のような構造が生じた。その後、細胞が破裂する様子が観察された。リゾチームの作用により徐々にバクテリアの細胞壁が変化し、溶菌する過程を動画でとらえることに成功した。

新型コロナウィルスなどの感染症の拡がりの影響もあり、抗菌剤や抗ウイルス剤の研究が盛んにおこなわれている。しかしながら、シャーレの培地上のコロニーによる観察実験が主であり、バクテリア単体に注目した、ナノスケールでの溶菌過程を観察する実験はほとんど行われていない。本研究のように、高速AFMを用いて抗菌剤のバクテリアに対する現象をナノスケールで動画観察することで、抗菌剤の作用過程を解明できる可能性があると考えられるとともに、新たな抗菌剤の開発に利用できると考えられる。

高速AFM観察画像


枯草菌

マイカにPoly-L-Lysineコートを施し、枯草菌をマイカ基板にソフトランディングさせ、
20 x 20 µm、200 x 200ピクセル、1フレームあたり15秒の条件で観察したもの。


枯草菌の溶菌過程

リゾチーム添加後、220~1340秒にわたって、枯草菌表面に短軸方向に
水平に「シワ」のような構造が生じた(t=1580s,下段右から2枚目)
その後、細胞が破裂する様子が観察された(t=1720s,下段右から1枚目)

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下記リンクから動画等をご覧いただけます。
 

出典論文

Hiroki Watanabe, Takayuki Uchihashi, Toshihide Kobashi, Mikihiro Shibata, Jun Nishiyama, Ryohei Yasuda
and Toshio Ando
Wide-area scanner for high-speed atomic force microscopy
REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS 84, 053702 (2013)

 

使用機種

サンプルスキャン型高速原子間力顕微鏡 SS-NEX

高速AFMのご紹介

  YouTubeチャンネル|株式会社 生体分子計測研究所

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